もともと孤独に向かう性向があるだけに,分裂病質の性格の人は,放っておくと<隠者>のような生活を始めることがある。いや,<隠者>というのは決して誇張ではない。たとえば,つい20年ほど前までは,研究所をねぐらにして,そこから一歩も出ないという研究者は珍しくなかったが,おそらく,そういったことをする研究者は分裂病質の性格の人であったろう。また,現代のように高度に発達した情報社会になると,直接,人と顔を合わせなくても,仕事を含めてたいていのことができるようになる。そうなったら,分裂病質の性格の人々はますますひきこもりがちになる可能性がある。
したがって,もしあなたの身近に分裂病質の性格の人がいるなら,やたらと話しかけて相手を疲れさせないようにするいっぽうで,時々は訪ねていったり,家に招待したり,あるいはパーティに連れていったりなど,相手があまり孤独のなかに閉じこもらないよう適度な刺激を与えたほうがよい。そうすれば,マリーヌの夫マルクのように,だんだんそういった状況に慣れてきて,人づきあいが楽になってくるということもある。人とつきあう能力を高めるには,ある程度の訓練が必要なのである。
フランソワ・ルロール&クリストフ・アンドレ 高野 優(訳) (2001). 難しい性格の人との上手なつきあい方 紀伊國屋書店 pp.161-162
(Lelord, F. & Andre’, C. (1996). Comment gérer les personnalités difficiles. Paris: Editions Odile Jacob.)
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