デザイン専門学校が学生にアピールしているキーワードは,やはり「デザイナー」「クリエイター」である。そしてここ十年くらいは「クリエイター」が大人気である。「クリエイター志望集まれ」「技術とセンスを伴ったクリエイターの時代」「将来を担うクリエイター集団の育成」……。学校によっては,ビジュアルデザイナーをビジュアルクリエイター,インテリアデザイナーをインテリアクリエイター,ウェブデザイナーをウェブクリエイターと,何でもかんでもクリエイターをつけて,言葉のイメージに弱い若者のおびき寄せに必死である。アーティストはやはり天分がないとなれないと,みんな思っている。だいたいデッサンがこんな下手クソでは,アーティストなんて無理だろうと。それに,よほど好きで仕方ない人でない限り,食べていける見通しがほとんど立たないようなことに,今の若者は手出しをしない。まずそれで生活できるかどうかである。それを考えると,クリエイターという職業は彼らにとって魅力的に映るらしい。
大野左紀子 (2011). アーティスト症候群:アートと職人,クリエイターと芸能人 河出書房新社 pp.147-148
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