2010年11月に発売された三洋電機のホームベーカリーの「GOPAN」は,米からパンをつくることができる製品であり,発売以降ずっと品薄状態で,1年経ってもいまだ入手困難が続く大ヒット商品だ。この商品を購入して満足したユーザーたちは,単に米からつくったパンの美味しさだけに満足しているわけではない。三洋電機に寄せられた商品の購買理由や反響の多くが,食料自給率,米の消費拡大に貢献したいからといった感情からくる購入だったという。つまり,「GOPAN」のヒットは愛国の感情とワンセットなのである。実際,これを発売した三洋電機も,商品の性能やコストを訴求するだけではなく,「自給率」「米消費」など,商品が持つ社会的役割を積極的に広報してきた。
「GOPAN」のヒットを後押ししたのは,日本人が共有する食料自給率低下への危機感という感情なのだ。愛国マーケティングとでも言ったところだろうか。
速水健朗 (2011). ラーメンと愛国 講談社 pp.47
PR