テレビというメディアの存在,そのビジネスによって,現実が書き換えられていく。これはラーメンに限らず,1990年代以降,さまざまなところで起きている現象である。その代表がスポーツイベントである。東京オリンピックの時代から,人気のテレビコンテンツの一角だったバレーボールは,日本チームが世界で勝てなくなっていった90年代を機に,大きくテレビコンテンツとしての最適化が図られていく。
まずは,ルールがテレビ的な理由で改正される。ラリーポイント制の導入により,試合時間が短縮されたのだ。会場では,日本チームを応援するDJが投入され,マイクを使ったワンサイドだけを応援するかけ声が響く。そして,開催地は,サッカーのワールドカップのように毎回変わるのではなく,毎回,日本開催となった。これは,国際バレーボール連盟が決めたことである。もはや,バレーボールは日本のテレビ局が独占するスポーツになっている。数字の取れる日本戦は,ゴールデンタームに放送され,強豪国同士が当たる準決勝や決勝は,深夜にでも放送があればいいほうといった具合である。スポーツにおける公平性は価値を失い,商業的な価値が優先されるようになったのだ。
速水健朗 (2011). ラーメンと愛国 講談社 pp.201-202
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