さて,日本の教科書では年を追うごとにジェームズへの言及が少なくなるのに対して,アメリカの教科書では多くなるという傾向は,心理学史に関する将を合わせた教科書全体でも見られる(表3-1)。日本では,1950年代と1960年代にはすべての教科書でジェームズが言及されていたが,2000年代には6割ほどになった。日本の一般心理学教科書とアメリカの教科書とでは分量面で相当の差があり,かなりコンパクトに記述しなければならない日本の教科書では,19世紀のジェームズにまでさかのぼって書くことは不可能であろう。逆にアメリカの教科書では,1950から60年代の教科書のうち2割ではアメリカ心理学の祖とされるジェームズへの言及がなかったが,1990年以降はすべての教科書で言及されるようになった。1990年の『心理学原理』100年を機に数多くの研究が発表されたことも関係あるだろう。
藤波尚美 (2009). ウィリアム・ジェームズと心理学:現代心理学の源流 勁草書房 pp.68-69
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