ダウネーは,ゼームズの,意思に就いて発動的と抑厭的とを分ちたる考へと,ダヴエンポートの気質を分ちて,運動性又は活動的と,非運動性又は非動的とした考とに據りて,行動の種々相に表はれる所から,(1)要求に応じて出て来る所の神経エネルギーの量,並に(2)このエネルギーの運動領域に働らく傾向によりて,気質の種々の型を定めることができるとなし,それに従って,運動性又は発動性と,非運動性又は抑厭性とを分ち,気質はこの両極端の間の種々の段階に分たれるとしてゐる。随って,行動又は衝動の,一般水準,抑止の程度,及び,衝動と抑止とが,一個性に於いて,函数的関係を保てるその様子を査定すべき,1組の方法を考案せば,以って,或る個人の智能その他の本能的行動が,如何に発動するかを示す所の指数となすことを得る。而して人格のかかる方面を検査する方法に特に「意志気質検査」と名づけた所以は,ここに気質とは内在的なる,生来性素質に関する名であって,それに意思といふ文字を冠するは,検査せらるべき特殊な素質の性質を示し,特に情緒と区別したものである。而して性格とは内在的なる生来性のものと,外来の獲得的なものと合成せる一組織を指す。故にこの意志気質検査は,性格検査の一種ではあるけれども,その全部ではない。而して以上の意味に於ける意思気質は,性格の内容を決定するものではないけれども,その形式を定めるものといふべきである。同様に,又,智能の高低を定むべきものではないけれども,それを如何に行使するかを定めるものである。
桐原葆見 (1930). 意志気質検査法とその規準 山越工作所 pp.2-3
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