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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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ゴルトンの指紋研究

 この1888年の講演以来,指紋への関心を深めたゴルトンは,自らの運営するサウス・ケンジントンの人体測定研究所において,指紋のサンプルの収集を始める。1890年までにおよそ2500人から指紋の提供を受けたゴルトンは,試行錯誤を重ねた結果,「容易に認識できるいくつかの差異」に基づいて分類するのが,もっとも実用的なやり方であるとの結論に至る。こうしてゴルトンは,すべての指紋を「弓状紋(arches)」「蹄状紋(loops)」「渦状紋(whorls)」のいずれかに分類する方法を提案する。今日においても指紋の分類の基本であり続けているこの3分類をゴルトンが着想するにあたっては,1823年の論文において指紋を9つに分類していた,チェコの生理学者プルキンエ(Jan Evangelista Purkyne, 1787-1869)の見解に負うところが大きかったと考えられる。
 だがゴルトンはこの3分類法を,人体測定法に代わる身元確認の手段とするつもりはなく,むしろベルティヨン法の補助手段とすることを考えていたようである。1888年の講演でゴルトンが指摘したように,ベルティヨン法による分類では犯罪記録の集合に十分なばらつきが得られないとするなら,そこに指紋による分類を付け加えれば,身元の確認はより一層容易になるだろう。「A.ベルティヨンのそれのような手法の実際的な有効性は,指紋を考慮に入れることによって,さらに高まる余地があるのである」。しかしそれは逆に言えば,すべての犯罪記録を分類するためには,指紋だけでは不十分であるということを,ゴルトン自身も認めていたということでもある。1892年にゴルトンは,指紋を専門的に扱った世界初の書物となる『指紋(Finger Prints)』を刊行するが,この記念すべき書物においてもゴルトンは,ベルティヨン法が約2万人の集合にまで対処できるのに対し,指紋法が対処できるのはおよそ500人であるとするなど,控え目な態度を守っている。その上でゴルトンは,ベルティヨン法に指紋を組み合わせれば,2万×500すなわち1000万の集合にも対処できるようになるとして,指紋法を人体測定法の補助として用いるべきであるとする主張を,再び繰り返すのだ。

橋本一径 (2010). 指紋論:心霊主義から生体認証まで 青土社 pp.119-120
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