ナルシシズムを内心の不安を隠す盾とみなすのには大きな問題がある。ナルシシズムを治すにはもっと自己を賛美すればよいと考える人が多いからだ。ナルシシズムは自己賛美では治らない。「自尊心がもっと高ければ,マイケルはあんなに人をないがしろにしないだろう」と思うかもしれないが,マイケルは本当は自分が相手よりもすぐれていて,自分のことのほうが大事だと思っているから人をないがしろにするのだ。自尊心が高いほど,とくにそれがナルシシズムにまでなってしまうと,問題はこじれるのである。だから学校でのいじめの問題の取り組みでは,自尊心を高めさせようとするときに,ナルシシズムを助長しないよう細心の注意を払う必要がある。いじめっ子に必要なのは他者を尊重する気持ちである。自分のことはすでに過剰なほど尊重している。
ジーン・M・ドゥエンギ/W・キース・キャンベル (2011). 自己愛過剰社会 河出書房新社 pp.39
(Twenge, J. M., & Campbell, W. K. (2009). The Narcissism Epidemic: Living in the Age of Entitlement. New York: Free Press.)
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