1つの種類の感覚インプットを別の種類の感覚インプットに代行させる可能性の研究には,1960年代末にポール・バック=イー=リータが他に先駆けて着手した。彼は,被験者に特殊な装置を装着させた。彼は,被験者に特殊な装置を装着させた。この装置は,映像を取り込むテレビカメラと,それを振動に変換して肌で感じられるようにするために,機械仕掛けのバイブレーターをずらっと平面上に並べたものから成り,被験者は,カメラを頭部につけ,バイブレーターを胴体に密着させる。すると被験者は,驚くほどわずかの練習をしただけで,触覚情報を使って,周りにある物を正確に視覚的に判断できるようになった。バック=イー=リータは,この現象を「皮膚視覚」と名づけ,被験者たちは限定的ではあるが視覚的知覚を得ていると,何のためらいもなく主張した。
ニコラス・ハンフリー 柴田裕之(訳) (2006). 赤を見る 感覚の進化と意識の存在理由 紀伊国屋書店 pp.62-63.
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