ナルシシストは,自分はなんでも知っていると思いたがる。これを心理学者は「オーバークレーミング」と呼ぶ。「なんでも知っている」という友人に「ビリー・ストレイホーンのジャズを聴いたことはある?」とか,「パウル・クレーの絵を知っている?」「ベルサイユ条約が調印されたのはいつか知っている?」とたずねると,「もちろん」と答える。そこで次はこんなふうに聞いてみたくなるかもしれない。「ミルトン・シラスのジャズを聴いたことはある?」「ジョン・コーマットの絵を知っている?」「モンティチェロ条約が調印されたのはいつか知っている?」。じつを言うとこれらはどれも実在しないのに,その友人は「もちろん」と答えるのだ。これがオーバークレーミングである。ある調査では150問中30問が嘘の問いだったが,知ったかぶりでは誰もナルシシストにかなわなかった。頭がよすぎて存在しないことまで知っているのだろう。
ジーン・M・ドゥエンギ/W・キース・キャンベル (2011). 自己愛過剰社会 河出書房新社 pp.57
(Twenge, J. M., & Campbell, W. K. (2009). The Narcissism Epidemic: Living in the Age of Entitlement. New York: Free Press.)
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