アメリカ国内でも,アジア系アメリカ人は自尊心が最低グループだが,学業成績は最も高い。「自尊心が目立って低い」グループがじつは成績が最もよく,先の論説の言葉を借りれば,「潜在的な能力を」非常によく「発揮している」。
アメリカで自尊心が高いことがよいこととして子供たちにさかんに奨励されたこの30年に,高校生の学業成績は向上していない。全米学力調査によると,17歳の数学の点数は304点から307点とわずかに上がったものの,読解力の点数は285点のまま横這いだった。つまり,学業成績の向上はせいぜい1パーセントに満たないのである。一方,成績評価は同時期に大きく上がった。評価がAもしくはほぼつねにAだと答えた生徒は1976年に18パーセントだったが,2006年には33パーセントになり,Aと自己申告する生徒が83パーセントも増加した。この30年で,実際の学力は1パーセント以下しか伸びていないにもかかわらず,成績評価Aは83パーセントも増えたのである。どうやらアメリカ文化は,成功そのものではなく成功の幻想を煽る作戦でいくことにしたらしい。
ジーン・M・ドゥエンギ/W・キース・キャンベル (2011). 自己愛過剰社会 河出書房新社 pp.62
(Twenge, J. M., & Campbell, W. K. (2009). The Narcissism Epidemic: Living in the Age of Entitlement. New York: Free Press.)
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