子育てに関するある調査は,子供をもてはやす子育てとナルシシズムとの関連を明らかにした。子供が何をしても褒めてやり,注意したりたしなめたりすることはめったにしない親である。子供がスポーツの大会に参加するだけでトロフィーをもらえる時代の子育てを,「褒めすぎ」と言う以上に的確に言い表すことはできないだろう。ほとんどの親はそれが子供のためになると思っている。褒めてやれば自尊心が高くなり,ひいては成功につながると信じている。また,褒めれば成績が上がる,褒めれば褒めるほど能力が伸びると思い込んでいる。さらに,子供にやる気を起こさせるには,恥ずかしい思いをさせるよりも褒めるのが一番だと思っている。屈辱感もやる気を起こす原動力になるが,気分のよいものではない。
何がよくできたとか,行儀よくしていたというときに子どもを褒めるのはよい。事実,悪いことをしたときに罰をあたえるよりも効果的である。だが,この数十年のアメリカは様子が違ってきた。ほんのちょっとしたことができただけで,ときにはうまくできなかったときでさえも,子供を褒めそやすのだ。本当は駄目なのに自分をすばらしいと思うのはナルシシズムへの近道なのだが,多くの親と教師はそれを自尊心と呼び換えて日々子供を励ましている。
ジーン・M・ドゥエンギ/W・キース・キャンベル (2011). 自己愛過剰社会 河出書房新社 pp.95
(Twenge, J. M., & Campbell, W. K. (2009). The Narcissism Epidemic: Living in the Age of Entitlement. New York: Free Press.)
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