食べものにも同じことが言える。夕食に何が食べたいかと2歳の子供にたずねれば,「クッキー」と答えが返ってくるかもしれない。だから,夕食にふさわしいものに限定した選択肢を2つか3つあたえよう。同じように,3歳児に「もう寝る?」と聞けば,大抵は「まだ」と答えるに決まっている。ここでも選択肢をしぼるのがよい。ジーンは3歳の姪に試してみた。「アレックス,もう寝る?それとも5分経ってからがいい?」。アレックスは少し考えて,「5分経ってから」と答えた。5分が過ぎ,「さあアレックス,5分経ったわよ。寝る時間ね」とジーンは言った。たったこれだけのことが効果抜群とはうれしい驚きだったが,アレックスは「うん」と言って素直にベッドに入ったのだ。もしここでアレックスが言うことを聞かなくても,こちらが折れてはいけない。ぐずって我を通した子供は,親の言うとおりにしなくてもよいと思ってしまう。
子供に「◯◯したい?」とむやみに聞くのはやめよう。親はよくこう聞くが,実際には子供に選ぶ余地がない場合が多い。ジーンはあるとき空港で,父親が3歳くらいの子供に「飛行機に乗りたい?」と聞いているのを見かけた。乗りたがろうが乗りたくなかろうが,たぶんその子は飛行機に乗ることになるのだ。たとえどちらか選べたとしても,そう聞くことで子供に権限をあたえてしまう。もし親が子供を公園へ連れて行こうと決めたなら,「公園へ行きたい?」と幼い子供に聞くのではなく,親が子供の気持ちを判断する。子供は自分がどうしたいかを,おそらく正しく理解していないだろう。これからすることが気に入るかどうかを予測するのは,大人にも難しいことだ。だから,「公園へ行くわよ」と言おう。ただし,「いいわね?」とうっかりつけ足してしまわないように。子供が望んでいないことを無理強いしているのではないかと心配する必要はない。本当に行きたくなければ本人の意志表示があるはずだ。ただし,これも本人が言い出す前に親のほうから機会をあたえてはいけない。子供が行きたくないと言った時点で,子供の意志を尊重するかどうかを親が決める。もしその子を除く家族全員が公園へ行きたければ,みなで公園へ行くことにするだろう。行きたくないと言った子供も,いつも自分の思いどおりになるわけではないことがわかる。そして,ときにはほかの人のために譲るのが大切だと知り,友だちづきあいや人づきあいがうまくなるだろう。
ジーン・M・ドゥエンギ/W・キース・キャンベル (2011). 自己愛過剰社会 河出書房新社 pp.103-104
(Twenge, J. M., & Campbell, W. K. (2009). The Narcissism Epidemic: Living in the Age of Entitlement. New York: Free Press.)
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