多くの人は「自尊心」をもとうとして,自己陶酔的な虚栄に陥ってしまう。小麦色の肌に見せたがるせいだろうが,15歳から34歳までの女性の皮膚がんの発生率がこの10年で20パーセント高くなった。それでも日焼けするのはなぜなのかと聞いてみれば,みな18歳のジャッキー・ハリスと同じように答える。「自分のことをいいなって思えるの。いまは,皮膚がんのことなんか考えていないわ」。整形手術を受けた理由に,多くの人が「自尊心」などのかたちを変えた自己賛美を挙げる(ただし,アメリカの文化で自尊心としてまかり通っているもののほとんどは,実際にはナルシシズムである)。こうした世界観をもつかぎり,自己賛美には皮膚がんや術後の合併症の危険を冒すだけの価値がある。アレックス・クチンスキーが書いているとおり,美容整形手術のリアリティ番組では「自尊心という言葉がマントラのように繰り返される」。ある男性の首のたるみ除去とまぶたの手術をした理由を,「もっと自信をもちたいんだ」と説明した。
ジーン・M・ドゥエンギ/W・キース・キャンベル (2011). 自己愛過剰社会 河出書房新社 pp.182
(Twenge, J. M., & Campbell, W. K. (2009). The Narcissism Epidemic: Living in the Age of Entitlement. New York: Free Press.)
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