自分を特別だと思うのはナルシシズムである。自尊心でも自信でもないし,子供に育んでやるべきものでもない。ナルシシズムと自信は違う。子供には,算数がよくできるねとか,がんばれば算数ができるようになるよと言ってやればよく,おまえは「特別だから」と言う必要はない。自分は特別だと思って悦に入るのもいいが,人と一緒に働き,行列に並び,高速道路で割り込まれる現実の世の中では,挫折するだけだ。ニコールが言ったように人を尊重するようになることもまずない。自分を特別だと思っている人は規則に従わなくてもいいだろうと考える。それは人から見れば不公平ということだ。私たちは5歳の子供に無理やりバスケットボールをやらせて,うまくできないことを思い知らせてやれとか,綴り方の勉強をしている娘をできが悪いと叱ったりしろと言っているのではない。「特別」だとわざとらしく褒めるのではなく,学ぶ楽しさや努力は報われることを教えてやるほうがいいと言いたいのである。
ジーン・M・ドゥエンギ/W・キース・キャンベル (2011). 自己愛過剰社会 河出書房新社 pp.229-230
(Twenge, J. M., & Campbell, W. K. (2009). The Narcissism Epidemic: Living in the Age of Entitlement. New York: Free Press.)
PR