ひとつのプランテーションが使いものにならなくなれば,新たにまた別の農場が開かれた。それは農場全体を一から作りあげる大事業だった。土地を開梱し,鉄道を敷設し,電線も延長しなければならず,労働者用の住まいや学校,病院も建設しなければならない。また,バナナを運ぶロバや食用の家畜のための放牧場を設け,製材所や機械工場,水上輸送システム,発電所などのインフラも整えることになる。会社の幹部が利用するさまざまな施設も,それまでのプランテーションにおけるのと同様に建設する必要があり,ときには以前の建物を解体し,それをふたたび新しいプランテーションで組み立てることもあった。こうしてどのプランテーションにもゴルフコースや教会,レストランが建造され,独身幹部向けには,しばしば年端のいかない娘たちを集めた売春宿も設けられた。それらはバナナ会社の幹部たちが,母国では絶対に手の届かない,あるいは絶対に許されることのないライフスタイルを楽しむための施設だった。ユナイテッド・フルーツの幹部たちが住むこの小さな居留地(コロニー)は,白人にとってけっして住みやすいとはいえない熱帯地方に,有能な管理者を惹きつける大きな誘因になっていた。
ダン・コッペル 黒川由美(訳) (2012). バナナの世界史:歴史を変えた果物の数奇な運命 太田出版 pp.152-153
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