有機栽培は,環境と労働者(とりわけ有害な化学薬品を扱わなくてよくなる人々)にとっては好ましいが,これはバナナ産業がもっとも早急に克服すべき“生き残り”という課題の答えにはならないだろう——それが実情である。広大な農場が開ける低い土地では,有機栽培でバナナを育てるのは難しい。仮にそうした土地で育つとしても,ブラック・シガトカ病や他のバナナの病気に感染した土地から隔離し,清浄な土壌に植える必要がある。バナナ会社が何十年も繰り返してきたように,新たな森の開拓なくして,それを実行するのは難しい。だが,グロスミッチェル時代に新しく開かれたプランテーションがそうだったように,最後には病気にかかるだろう。抵抗力の弱い果物の世界では,オーガニック・バナナはその本質からして分が悪い。
ダン・コッペル 黒川由美(訳) (2012). バナナの世界史:歴史を変えた果物の数奇な運命 太田出版 pp.317
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