何世代もの児童生徒に植え付けられてきたステレオタイプに,「科学的方法とは型にはまった自動的な作業だ」というものがある。つまり科学研究とは,仮説を立てて検証し,また仮説を立てることだというのだ。これに対して,科学者がやっていることを漠然とではあるが多少正確に説明しているのが,「科学者は現象を見る」という言い方だろう。科学者はひとつの現象をさまざまな角度から吟味し,あれこれやってみては何が起こるかを見るのである。ニュートンは部屋を改装した実験室で,さまざまな位置に置いたプリズムやレンズを使い,光を見た。そうして彼は最終的に,白色光は純粋なのではなく,さまざまな色の光が混じり合ったものだという結論に達した。ニュートンは後年次のように書いている。「哲学をするうえで最高にしてもっとも安全な方法は,まず最初にものごとの性質を入念に調べ上げ,そうして明らかになった性質を実験によって確立し,その後,それらの性質を説明する仮説へと,いっそう時間をかけて進んでいくことであるように思われる」。
ロバート・P・クリース 青木薫(訳) (2006). 世界でもっとも美しい10の科学実験 日経BP社 pp.102-103.
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