経済学者は安心という意味について独特の解釈をしている。多くの現象は,2ゆ(あるいはもっと多く)の均衡を持つのが特徴だ。たとえば,ハリケーン・カトリーナの後でだれもニューオーリンズの家を再建しようとしないなら,それ以外のみんなだって再建しようとはしないだろう。ご近所もいないし店もないというのに,だれがそんな無人の荒地に住みたいだろうか?でももし多くの人がニューオーリンズの家を再建しようとしたら,それ以外の人たちも再建をしたがるだろう。ということで,ここには2つの均衡がある。1つは再建が行われる良い均衡だ。われわれはこれを安心がある状態だという。もう1つは,再建が行われない悪い均衡だ。これは安心がない状態だ。この見方だと,安心というのは予測でしかない。この場合は,他の人が家を建てるかどうかという予測となる。安心のある予測は,未来がバラ色だという予測だ。安心のない予測は,未来が暗いというものとなる。
ジョージ・A・アカロフ/ロバート・J・シラー 山形浩生(訳) (2009). アニマルスピリット 東洋経済新報社 pp.14-15
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