その他あらゆる商品の需要と同じく,この需要も収入だけでなく,商品の価格やコストにも左右されるはずだ。ここでのコストとは「そうした(無利息の)当座預金を持っているコスト」ということになる。経済学者の大少なお話によると,人々はときどき(無利息の)銀行預金が多すぎたり少なすぎたりしないか考えるのだという。持ちすぎだと思えば,証券とかその他のものを買って銀行預金を減らす。そして少なすぎたら,お金を借りたり支出を抑えたりして,残高を増やす。この検討の頻度は,お金を手元に持つコストに依存する。そのコストとは何か?無利息で銀行に入れるかわりに何か持っていたら稼げるはずのお金が,そしてそれがまさに利子率——お金を手元に置くことによる機会費用だ。利子率はお金を保有することの「値段」なのである。
ジョージ・A・アカロフ/ロバート・J・シラー 山形浩生(訳) (2009). アニマルスピリット 東洋経済新報社 pp.114
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