20年以上もの間,彼らは自分が論争に加わったどの問題についても,独自の科学研究をほとんど行なっていなかった。かつては卓越した研究者だった彼らも,われわれの物語の主題に手を染めるようになったときには,ほとんど他人の研究と評判を攻撃するばかりになっていた。実際,どの問題についても,彼らは科学者たちが合意していることとは反対側に立っていた。喫煙は——直接的にも間接的にも——確かに死をもたらす。大気汚染は酸性雨の原因になる。火山はオゾンホールの原因ではない。海面が上昇し,氷河が融けているのは,化石燃料の燃焼によって生み出される温室効果ガスが大気に及ぼす影響が増大した結果だ。しかし,マスコミは何年もの間,彼らを専門家として扱い,政治家は彼らの言い分に耳を傾け,何も行動を起こさないことを正当化するために彼らの主張を利用した。ジョージ・H・W・ブッシュ大統領[シニア]などはかつて,彼らを「私の科学者たち」と呼んだほどだ。現在の状況はいくらかましになっているが,彼らの意見や議論はいまでもインターネットやトークラジオ,さらには議員たちによって引用され続けている。
ナオミ・オレスケス,エリック・M・コンウェイ (2011). 世界を騙し続ける科学者たち(上) 楽工社 pp.29
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