詳細な報告の多くは,非常に専門的な雑誌(たいていのジャーナリストや議会スタッフが日常的に読んでいないもの)か,政府の報告書に発表された。スウェーデンの研究結果は,無理もないこととはいえ,ほとんどはスゥェーデン語で発表された。こうした専門的な部分での困難は,DDTの被害にもついてまわった。大部分は政府の報告書に書かれていたが,レイチェル・カーソンはそれをまとめて『沈黙の春』を書き上げた。経口避妊薬の危険性も同じことで,ほかの点では健康な若い女性に原因のよくわからない血栓ができる症例が,最初は眼科学の専門的な雑誌に掲載されたのだった。これは科学の特徴的なパターンだ。ある現象の証拠が最初は専門家向けの雑誌や報告書にばらばらに掲載されていて,やがて誰かが散らばった点を結びつけ始める。
ナオミ・オレスケス,エリック・M・コンウェイ (2011). 世界を騙し続ける科学者たち(上) 楽工社 pp.141-142
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