科学雑誌はすべての論文をピアレビューにかける。普通は3人の専門家にコメントを依頼する。査読の意見が大きく割れた場合,編集者はさらに査読者を追加でき,自分の判断も加えることができる。論文執者が査読者の指摘した誤りを修正し,問題点を手直しするというプロセスは2,3回繰り返されることが多い。それでも合格しなければ,その論文は掲載拒否となり,執筆者はまた1から書き直すか,それほど評価の高くない別の雑誌に投稿を試みるかする。カンファレンスはあまり厳格でないことが多く,カンファレンスに発表された論文が一般に真剣に受け止められないのはそのためだ。査読方式をとっている雑誌に発表されない限り,学問の世界で昇進や終身在職権の検討材料にはならない(ときとして産業界は,自らカンファレンスを主催して論文集を発行するというもっともらしい便法を利用する)。また,査読者は本当の専門家でなければならない。その研究に使われた方法と論文の主張していることを判断できるだけの知識が必要だ。そして査読者は,審査される論文の執筆者と——個人的であろうと職業上であろうと——近い関係にあってはならない。こうした基準に合う査読者を見つけるために,編集者はかなりの時間を費やす。これはすべて無償で行なわれ,科学者たちは共同体の制度の一部として論文の審査を行なっている。誰もがほかの人たちの論文を審査することが期待されているが,それは彼らの論文もまた,ほかの人たちによって審査されるという了解があるからだ。
ナオミ・オレスケス,エリック・M・コンウェイ (2011). 世界を騙し続ける科学者たち(下) 楽工社 pp.51
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