『環境危機をあおってはいけない』の中でロンボルグは,いまではもうおなじみの主張を繰り返している——レイチェル・カーソンはDDTについて間違っていた,地球温暖化は深刻な問題ではない,森林がうまく対処してくれる,と。一般に,生活はほぼすべての人にとってずっと良くなっており,「将来について思い煩う必要はない」という。それなら,環境保護論者たちは何のために騒いでいるのだろうか?
ロンボルグの本は,統計の御用の典型的な例だと批判されている。2002年に『サイエンティフィック・アメリカン』で4人の指導的な科学者が,ロンボルグの計算は4つの点で「誤解を招く」ものだと述べた。デンマークではこの本をめぐって論争が起き,ロンボルグは科学的に不誠実だと攻撃された。ついにはデンマークの科学・技術・革新省が裁定に乗り出し,ロンボルグを科学的に不誠実だとは言えないとした。なぜなら,『環境危機をあおってはいけない』が科学的著作だと証明されていないからだという!
ナオミ・オレスケス,エリック・M・コンウェイ (2011). 世界を騙し続ける科学者たち(下) 楽工社 pp.242
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