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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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フロイト説について

 フロイト説は鋭い考察により,思い設けぬ視野を切り拓いてみせる。ベッテルハイムが観察方法としての精神分析学にもっとも高い評価を与えているのは,もっともである。この方法が巧妙に適用されるとき,常識的な外見の裏に潜む別の世界像が次第に梅雨を払って現われでるような不思議な魅惑に襲われる。夢判断は,もっとも典型的な例証をなす。
 しかし,反面,動的心理学や人格心理学としての理論化・体系化には数々の疑問が残る。フロイトは,当時の最新科学思想たる力学的自然観の信奉者ブリュッケを慕って生理学を専攻したほどであるから,通常想像されるようなロマンティストではなく,厳密な科学主義者であった。心身両面を通じての一次元的エネルギーであるリビドー概念の創出や,いったん生起したリビドーはけっして消失せず抑制しても神経症候その他に変形して再現するという一種のエネルギー保存の原則などは,フロイトにおける力学的自然観の影響をよく示しているというべきであろう。また,当時の自然科学者らしくフロイトは決定論にこだわったようにみえる。多元決定などと一方では唱えながら,大筋としては幼児期の外傷体験や欲求不満がほぼ一元的に神経症候を作るとされ,後に幼児期宿命論の批判を浴びるもととなった。

藤永 保 (1991). 思想と人格:人格心理学への途 筑摩書房 pp.179-180
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