まず,台湾人のきき手についての研究では,強い左ききは男子で2.0%,女子で1.0%,弱い左ききとされたのが男子で4.0%,女子で2.0%であった。日本人よりも左ききが少ないといえそうである。
イタリアはカトリックがもっとも一般的な宗教であり,左手への禁忌が強い国として知られている。このイタリア人成人を対象にした調査結果では,右ききが63.6%,左ききが6.4%であった。残りは両手ききであり,性差は認められていない。両手ききが日本人よりもずいぶん多い様子がうかがえる。
宗教上,左手への禁忌がカトリックと同じように強いのがイスラム教である。ペインはイスラム教の国である北ナイジェリアできき手の調査を行っている。大学生を対象に実施されたこの調査では,9.7%が左ききということで,結構多いという印象をもつが,これは実際に使う手を聞いたもので,どちらの手を使うのが望ましいかを尋ねた結果では,左ききとする人は1人もいなかった。望ましくないとは感じつつも左手を使う大学生が少なくないという事実は,大学生という恵まれた特別な階層の若者では宗教上の禁忌が弱まっていることを示している。それと同時に,宗教上の圧力がない場合に生物学的に生じる左ききは10.0%程度である可能性を示唆するように思われる。
八田武志 (2008). 左対右:きき手大研究 化学同人 pp.71-72
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