瞬間提示法を用いた視覚機能の研究は,基本的に左ききと右ききでは異なる脳機能をもつことを示しているといえそうである。つまり,右ききが左右脳の機能差を明確に示すのに対して,左ききは明確な左右脳機能差を示さないというわけである。
このような,きき手による脳機能の違いについて,イギリスのバーモントは左ききの脳機能が右ききに比べて拡散的であるとする。つまり,左ききの脳は同レベルの視覚認知の仕組みを左右脳にそれぞれもつのに対して,右ききでは機能の左右脳への特殊化が明白なのだとしている。別のいい方をすれば,右ききの脳は機能が特定の部位に局在している傾向が強いのに対して,左ききの脳はその傾向が弱いということになる。これは決して左ききの脳が劣るということを意味するのではない。右ききの脳が決まったポジションを守って活躍する野球選手のタイプであるのに対して,左ききの脳はどこでも守れるオールラウンド・プレーヤータイプであるというような意味である。
八田武志 (2008). 左対右:きき手大研究 化学同人 pp.144-145
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