どんな判断にも,第1種の過誤と第2種の過誤をおかしてしまう可能性があります。ネットオークションで最安値だと判断し入札したら,実は相場と変わらなかった,こんな経験は誰にでもあると思います。逆に,相場と変わりなく安値感がないと思っていたのに,よく調べたらものすごくお買い得だった。そんなこともあるでしょう。前者の例は差があると判断したのに(最安値だと思ったのに)違ったので,第1種の過誤です。一方,後者の例は,差がないと判断したのに(相場の値段と変わらないと判断したのに)差があった(お買い得だった)ので,第2種の過誤になります。
有意水準だけに注目する帰無仮説検定では,第2種の過誤についてほとんど情報が得られません。有意水準は第1種の過誤が生ずる確率であり,帰無仮説検定では,それだけをコントロールするからです。第2種の過誤の確率は直接コントロールできません。しかし,上の日常的な例からも分かるように,何かの判断をするなら,第1種の過誤と第2種の過誤のどちらもが生じうるのです。
大久保街亜・岡田謙介 (2012). 伝えるための心理統計:効果量・信頼区間・検定力 勁草書房 pp.150-151
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