検定力に関わる3つのパラメータ,すなわち効果量,標本サイズ,有意水準のなかで,研究者が能動的に関与できるものが1つだけあります。それは標本サイズです。効果量はそれ自体が検討の対象ですから,どのようになるかはわかりません。そもそもはじめから効果量がどいのくらいかわかっているなら,研究をする必要がありません。もちろん,先行研究から期待されるおおよその効果量のサイズはあるかもしれません。しかし,実際にデータをとらなければわからないからこそ研究をするのです。また,有意水準は,繰り返し述べているように,心理学では慣習的に5%で固定されています。効果量は測定してみなければわからない,有意水準は固定で動かせない,だからこそ,標本サイズだけが研究者が能動的に動かせる唯一のパラメータとなります。
大久保街亜・岡田謙介 (2012). 伝えるための心理統計:効果量・信頼区間・検定力 勁草書房 pp.153
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