これによると,米国の橋は,第2次世界大戦前の1920〜30年代に多く建設されていたことがわかる。いわゆるニューディール政策が推進された時期である。30年代だけで5万以上の橋がかけられた。この時期の建設された橋が,80年代には老朽橋になっていたのである。
ニューディール期につくられた社会資本が,その後,経済政策の変更で補修更新財源を縮小された結果,崩壊の危機を迎えるが,再び政策の転換により危機を脱出する。社会資本老朽化問題は,技術問題であると同時に経済問題であることがわかる。
一方,日本での橋の大量建設は,1950〜60年代に始まっている。米国から遅れること30年,第2次世界大戦後の復興から高度経済成長に向かう時期に,社会経済活動の基盤として社会資本が整備されたのである。このこと自体は間違いではない。それどころか,短期的な需要創造に偏りすぎたと批判されるニューディール政策に比較すると,この時期の日本の公共投資は,その後の経済成長の源になった。日本の経済史の観点から見ると,その意義は非常に大きいと言えるだろう。
だが,現在,これらの橋が建設後50年を経過しようとしているのも事実である。供給面の問題を忘れると,米国の二の舞になる。現代の日本の置かれている状況は,80年代の米国に相当するのである。日本は崩壊寸前の状態にあると言わざるをえない。
根本祐二 (2011). 朽ちるインフラ 日本経済新聞社 pp.39-41
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