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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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○○は別だ

 「おっしゃることはごもっともだが,◯◯は別だ」という主張である。◯◯の中には,自分が重要だと思うものであれば何を入れても良い。学校でも公民館でも橋でも良い。理由も自分にとって重要であるという1点を主張しさえすれば良い。さらに,議員を動かす,あるいは聖域削減を主張する候補者に投票しないという行動に移せばより効果的だ。その結果,聖域を守ることを主張する政治家が当選する。
 ある地域では,公民館が絶対に必要だという意見に遭遇した。別の人はスポーツ施設が大事だと言った。「では,どちらを優先するのですか」と聞いても,自分が支持する施設の必要性を主張するだけだった。
 ある自治体の行政改革の仕事をしたとき,民間からのアイデアに対して,担当部署が「◯◯は重要なので,公務員が自ら行うべき」と回答し,それを自治体の公式意見として出そうとしたことがあった。そのとき,◯◯に書いてあったのは公共建築物の維持管理業務だった。実際には,維持管理の多くはアウトソーシングしている。にもかかわらず,その担当者は聖域だと主張した。納税者のことは眼中になく,とにかく自分(もしくは自分の部下)の仕事を守ることが最大の使命だと思っているようだった。
 こうした利用者や役人による聖域化の行動が,公共投資の肥大化を招いた。声の大きな人が支援する分野,必至に守ろうとする分野が予算を獲得し続けることで,もっと重要かもしれないことにお金が回らなくなった。重要性を比較し議論することなく,不透明な政治プロセスの中で支出が決められた。
 自分たちの世代が利益誘導をした結果,あるいは,見て見ぬふりをした結果,もしくは,部分最適化に走った結果,子どもや孫の世代に,老朽化したインフラと大幅な予算不足の事実だけを残すことになった。筆者自身も含めて大いに反省すべきだろう。なんとかこの悪循環を断ち切る方法はないものだろうか。

根本祐二 (2011). 朽ちるインフラ 日本経済新聞社 pp.65-66
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