敗戦後の経済復興から先進国でも有数の経済大国にまで成長するため,公共投資が先導的な役割を果たした。さらに,石油危機後の低迷期やバブル崩壊後など経済に大きな打撃を受けた後に,公共投資による内需拡大を図った。経済対策としては常道である。そうしなければ,雇用が失われ経済はさらに落ち込み,将来どころか現在生き残ることすらできなくなるかもしれない。筆者はこうした政府の役割を否定するものではない。
だが,それはあくまでも,投資をフローの1項目としてとらえたときの話である。投資は,耐用年数の限られたストックである。老朽化すればいずれは使えなくなり,更新投資が不可避となる。民間企業であれば,ストックの老朽度や更新投資の必要性を常に意識しながら投資行動を行う。そうしなければ,競争力を失い,市場から退場を余儀なくされるからである。
だが,残念ながら,国にも自治体にもその認識はない。景気が低迷したときには公共投資を拡大しようとするが,何十年か先に更新投資が必要になることまでは考えていない。その先見性のなさが,社会資本の崩壊を生み出すのだ。このメカニズムに日米の差はない。
根本祐二 (2011). 朽ちるインフラ 日本経済新聞社 pp.69-70
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