市民(この場合は科学者だが)のグループが,政府はある特定の問題に取り組むためにさらに多くのことをすべきだと判断したとき,そのグループは困難な課題に直面する。市民がさくことのできる努力の量は限られていて,官僚はお役所的なやり方で凝り固まっているからだ。何かを達成する——たとえば,政府の新たな計画をもたらす——ためには,人々は協調したはたらきかけを展開しなければならない。関心のある市民は数年間にわたって問題に取り組み,大衆に広く伝えるとともに,同じ意見をもつ官僚との協力関係を作りださなければならない。この官僚機構内部の協力者は,委員会をつくり,報告書の草稿を書き,政府と議会に妨げられることなく法律が制定されるよう取りはからわなければならない。変化に脅かされると感じる特別利益団体からの妨害があるだろうし,プロセス全体が疲弊して失敗に終わりやすい。一般的には,そのような努力が実を結ぶのは特別な機会を利用することができたときだけだ。たいていそれは,ニュースが一般大衆の不安を大いにかき立てて,それゆえに政治家の注意を引いた場合である。
スペンサー・R・ワート 増田耕一・熊井ひろ美(訳) (2005). 温暖化の<発見>とは何か みすず書房 pp.122-123
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