大多数の科学者は,気候がカオス的システムの特徴をもっているという点には同意するものの,完全にランダムなものだとは思っていなかった。竜巻がある特定の日にテキサス州のある特定の町を襲うと予測することは,原則としておそらく不可能だろう(もちろん1匹の罪深い蝶のせいではなく,初期の無数のごく小さな影響の正味の結果だ)。それでも,竜巻の季節は予定通りにやってくる。このような種類の一貫性は,1980年代に構築された計算機シミュレーションで現れた。GCMを異なる初期条件から始めて多数実行してみると,それぞれの地域,それぞれの季節について計算される気象パターンにはランダムな変異が見られる。しかし,年平均の全地球平均の温度に関しては,どのモデル実行も同じような結果に集中する。そしてどのモデルも,次世紀については何らかの温暖化を示していた。
スペンサー・R・ワート 増田耕一・熊井ひろ美(訳) (2005). 温暖化の<発見>とは何か みすず書房 pp.151
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