生徒間のいじめを防止することはきわめて困難だと,山崎博士はいう。なぜなら,幼い子供たちは,自分の親やその他の大人たちが,会社,工場,といった職場あるいはPTAの会合などで使っている戦術をそっくり模倣しているだけだからだ。「いまやいじめは,どこででも見られる現象である。組織的かつ継続的に行なわれ,そのやり口も卑劣で目立たないものになっている。いじめにおいては,3つから4つの集団が複雑に関係しあっており,いじめる集団,いじめられる集団,いじめの実行者を背後で操る集団……そして巻きこまれないように,いじめ行為をただ傍観している集団が存在する」不登校児に関する研究のなかで山崎はそう結論している。
もちろん,アメリカなど,ほかの国の教室や校庭でも,いじめは発生しているが,その特徴や頻度の点で,日本のいじめははるかに残忍で,致命的な結果をもたらすのだ,と山崎はいう。日本人は人種的,民族的,文化的な絆で結ばれた単一民族であり,みんなが同じ思考や価値観を共有している,というのが国家的定説になっている。この単一民族国家というイデオロギーが,異質な者に対する攻撃を正当化しやすくしているのである。
マイケル・ジーレンジガー 河野純治(訳) (2007). ひきこもりの国:なぜ日本は「失われた世代」を生んだのか 光文社 pp.88-89
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