Hall(1904)の「疾風怒涛」概念:青年期は相互に矛盾する傾向のあいだを揺れ動き続ける時期であるため,若者は情動と人間関係の両面にわたって動揺を経験していると説いた。
これまでの研究から結論として示されたのは,たしかに少数の若者はストレスに満ち混乱した青年期を体験するかもしれないが,青年の多くは比較的よく適応している,ということである。青年の多くは,家族から疎外されたりせず,重大な精神病理的な障害も持たず,両親とのコミュニケーションが完全に途絶えてしまうということもなく,深刻なアイデンティティの危機を経験することもないということを研究は示したのである。
このような証拠に基づいて言えば,スタンレー・ホールが青年期は疾風怒涛の時代だとした考え方は,誤解を与えるものだと結論づけられるだろう。深刻な動揺は少数の若者によって経験されているに過ぎないからである。
J.コールマン & L.ヘンドリー 白井利明ほか訳 (2003). 青年期の本質 ミネルヴァ書房
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