ほんとうの「スクープ」を放つのは,たいていの場合,威勢をふるう「記者クラブ」に加入できない週刊誌である。じつはそうしたスクープは大新聞の記者から漏らされることが多い。自分のところの新聞では公表できないことがわかっているので,ライバルである「スキャンダル雑誌」に流すのである。
こうした横並び体質にもかかわらず,日本の新聞は影響力が強く,広く読まれている。保守系の読売新聞やリベラルな朝日新聞のような大衆向け新聞の発行部数は,アメリカの大手新聞の8倍から10倍に達する。日本の人口はアメリカの半分にも満たないというのに,である。日本の新聞は地位が高く,割引をいっさい認めず,月に一度,丸一日新聞を印刷せず,輪転機と配達員を休ませる「新聞休刊日」を設けているくらいである。どうやら日本の新聞は,欧米ではおなじみの,独自の調査報道によって,弱きを助け,強きを挫き,一般市民の利益を守るために日夜戦いつづけるというジャーナリズムの伝統を,まったく理解していないようだ。
マイケル・ジーレンジガー 河野純治(訳) (2007). ひきこもりの国:なぜ日本は「失われた世代」を生んだのか 光文社 pp.178-179
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