欧米との決定的な差異は,日本では給料が高い女性ほど,結婚しないという点である。スウェーデンとアメリカでは,給料が高い女性ほど,同棲から結婚に至る可能性が高くなるという。このデータを集めた人口統計学者の小野博美によれば,日本では高学歴の女性ほど結婚しない傾向があるという。なぜなら,日本は性別によってのみ社会的役割が規定される社会であるため,子供を持ちながら仕事の第一線で活躍することは社会が許さないからだ。別の調査では,小野の所見を裏付けるとともに,日本の結婚市場の大きなミスマッチを浮き彫りにしている。つまり,日本では,高度な教育を受けた女性ほど,ふさわしい男性を見つけるのが難しいのである。現在,東京都内に住む50歳以上の大卒女性の12パーセントは,一度も結婚した経験がないという。いっぽう,一度も結婚したことがない男性のなかで一番多いのは,中卒以下の層である。また,これらの男性は「昔ながらの」専業主婦を求める傾向が強い。高学歴女性にとって問題なのは,子育てを分担し,共働きに理解を示す「リベラルな」夫を求めているのに,高学歴な男性の大部分も「昔ながらの」専業主婦を求めている,ということだ。
マイケル・ジーレンジガー 河野純治(訳) (2007). ひきこもりの国:なぜ日本は「失われた世代」を生んだのか 光文社 pp.252-253
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