このように韓国では市民運動が活発で,国内政治でも勢力を拡大している。とはいえ,欠点もある。韓国は日本のように平穏ではない。礼儀正しさや協調性もない。政策を話しあうような場合でも,あまり建設的な対話は期待できない。政党は,一貫した理念のもとに政策実現を目指す政治集団というよりも,たいていの場合,政治家個人を支持するために作られたカルト集団のようなもので,しかも腐敗にまみれている。有力かつ強力な市民団体はたえず国と対立しているので,韓国の民主主義はひじょうに不安定で,御しがたく,脆弱である。かつてのアメリカがそうであったように,若い民主主義にはバランスのとれたシステムが存在しなければならない。つまり,活力ある市民社会が,既存の政治機関を監視し不正を阻止しなければならない。
しかし韓国には,そのようなバランスはかならずしも見られない。何十年ものあいだ独裁政権の弾圧に抵抗してきた韓国人は,ときどき行きすぎたことをしたり,過剰反応を示したりするようだ。たとえば,国会ではよく議員同士が殴り合いの喧嘩をする。また,韓国はかつての外国人嫌いを完全に払拭してはいない。外国人を疑い,グルーバル化がもたらす国際的な統合に抵抗を示す者も少なくないのだ。
マイケル・ジーレンジガー 河野純治(訳) (2007). ひきこもりの国:なぜ日本は「失われた世代」を生んだのか 光文社 pp.362-363
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