大金を掴んだ人たちが口々にいうのは,嫌なやつにもう頭を下げなくていい,ということだ。生活のために嫌な上司や客,嫌な会社にもう尻尾を振らなくていい。金を稼ぐ苦労もしなくていい。毎日好きなことをして暮らせる「自由」が手に入るからだ。もう1つある。右のことの延長で,金のことを忘れていられる,ということである。もはや金の心配をしなくていいということは,なんと「自由」であることか。
ところが,金があればあったで,心配があるようである。金が減り続けることである。だから,またかれらはいう。「成功」とは大金を掴むことではない。金の源泉が涸渇しないように,金が入ってくる仕組みを作って,自分が遊んでいても,金の流れが途切れないようにすること,つまり宝くじのような一過性のものではなく,金を持ち続けることが「成功」であると。かれらはかれらで,金の流れが止まることを心配しているのである。その流れが止まらないように,必死,のように見える。
勢古浩爾 (2010). ビジネス書大バカ事典 三五館 pp.112-113
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