福知山線の脱線事故において,事故調査委員会は,運転士がこの日勤教育を恐れて運転中に言い訳を考えていたり,速度超過をしたと指摘している。
現在の過密輸送ダイヤではミスを犯さないことの方が難しい。まして鉄道員が減らされている現状では,乗務員1人1人の責任が非常に重くなってきている。
ラッシュ時に多数の乗客がノロノロと乗車すれば遅延が発生するし,それが過密ダイヤなら尚更である。本来なら「安全のため」という一言で,ある程度の遅延や利用客の苦情は押しのけることができるはずだ。しかし,現在の鉄道事情にがんじがらめになった運転士は「安全のため」という言葉よりも,ミスを取り返すことを優先した。そうして事故が発生したのではないだろうか。
考えてみてほしい。そんな危険と隣り合わせの過密ダイヤを望んだのは誰か。運転士に重圧をかけるような体制にしたのは誰か。それは,利用者であり会社であり時代なのである。
そして,表面上の報道しかしないメディアの責任も大きいと考えている。
大井 良 (2008). 鉄道噂の真相:現役鉄道員が明かす鉄道のタブー 彩図社 pp.248
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