ひとたび国債の大暴落が起きれば,国債を大量に保有している銀行や証券会社の倒産が相次ぎ,ペイオフで守られている1000万円以上の銀行預金は失われることになるでしょう。もちろん,小口銀行を直接保有している国民も大打撃を受けることになります。また,国内の全ての銀行が深刻な経営危機を迎える状況になれば,法律改正によって,もはや,ペイオフすらも守られるかどうか,定かではないと言えます。
さらに,現在のユーロ安同様,金融危機によって円安が急速に進みますから,輸入品の価格が上昇してインフレーションが起きます。このインフレによって,国債の価値はいっそう下落することになります。また,円安予想によってさらに海外の投資家が国債を投げ売りします。当然,これらの事態によって,国内の景気は急落して,ますます円安,国債価格下落が続くでしょう。このように,国債の大暴落によって,家計金融資産の大半が失われ,最終的に政府債務の解消が行なわれるというのが,最悪のハードランディングのシナリオです。
もちろん,政府がもっと早い時期に「借金を返さない」とデフォルト宣言を行っても,国債は紙くず同然の価値になりますから,同様にハードランディングのシナリオと言えます。
鈴木 亘 (2010). 財政危機と社会保障 講談社 pp. 48
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