コレクターの多くは,自分のコレクションが子孫や孫の世まで伝えるべき遺産であると考えている。中には,とくに芸術品や歴史的な工芸品に関して自分のコレクションを博物館に寄贈したり,自分の博物館を造ったりすることで,後世に残そうとする人もいる。ここから,モノの収集はある種の不死の形を作ることであり,それによって死への恐怖を抑えるための方法なのではないかと考える専門家もいる。この考え方は,社会心理学で恐怖管理理論(TMT)として広く知られている理論と一致する。TMTは,人も他の動物と同じく死を免れないという,存在に関する受け入れがたい事実から生まれた。しかし,他の動物とは異なり,人間は自分がいつか死ぬことを知っている。だから自分がいつか死ぬこと,そしてそれがいつなのかを予測できないことで,恐怖に怯えることになる。さまざまな文化において,この潜在的な恐怖を管理するために,教義や儀式,その他の秘策が用意されている。そのひとつが,人は死んでも,その一部が生き続けるという考えだ。価値あるモノを作ったり集めたりするのは,それを達成するための方法のひとつである。つまりモノを収集することが不死への可能性を開くことになるのだ。
ランディ・O・フロスト ゲイル・スティケティー 春日井晶子(訳) (2012). ホーダー:捨てられない・片付けられない病 日経ナショナルジオグラフィック社 pp.74-75
(Frost, R. O. & Steketee, G. (2010). Stuff Boston: Houghton Mifflin Harcourt)
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