コレクターの中には,奇抜さと病的というべき状態とを兼ね備えた人もいる。アンディ・ウォーホルはアーティスト,映画監督,写真家,そしてセレブリティであり,当時の大衆文化を反映したポップアートの旗手とされる。彼が描いたキャンベル・スープ缶やコカ・コーラのビンといった商品の絵画はアメリカ文化の再現であり,特別なものではなく日常的なモノを取っておく方法であった。ウォーホルはまた熱心なコレクターでもあり,毎日のように蚤の市や骨董店,オークションハウス,画廊などで——何か興味を引かれるモノが見つかれば,どこででも——買い物をした。彼はあらゆる種類や時代の芸術品だけでなく,ガラクタとみなされそうなモノも集めた。そして他の有名なコレクターと同様に,収集品の一部を展示しただけで,ほとんどのモノは倉庫に保管していた。それでも,ニューヨーク市にあった彼の5階建ての家はモノで埋まり,使えたのはたったの2部屋だけだった。彼の買い物にしょっちゅう同行したスチュアート・ピヴァによれば,ウォーホルはコレクションの少なくとも一部を売却する計画を立てていたが,58歳で亡くなったときにはまだ収集段階にいた。彼が果たしてこの段階を超えられたかは疑問である。一度彼は,メキシコの儀式用仮面をある骨董店に販売委託したことがあったが,実際に売られてしまうことが怖くなって取り戻している。
ランディ・O・フロスト ゲイル・スティケティー 春日井晶子(訳) (2012). ホーダー:捨てられない・片付けられない病 日経ナショナルジオグラフィック社 pp.76
(Frost, R. O. & Steketee, G. (2010). Stuff Boston: Houghton Mifflin Harcourt)
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