若い世代に限らず,若者論が関わってくる分野で重要なのは,「世代」概念の呪縛から脱することではないだろうか。すなわち,この世代はこれこれこういう環境で育ってきた世代なのだから云々,という決定論を乗り越え,普遍的な判断基準に基づいて種々の問題を検討することだ。
普遍的な基準とは,すなわち科学であり,人権であり,経済であり,法である。例えば,ある人が何らかの理由で困窮している場合,それは経済的な問題であり,また政府による生存権の保証の問題である。そして,現代の多くの問題は,これらの側面で解決できるものが多い。
下手に壮大な社会論,もしくは世代論に手を出してしまうと,議論は無意味な世代間闘争に陥ってしまうだろう。現在,決してよくない状況に陥っている人たちへの救済は,本来は科学的な実態の把握に基づいて語られるべきものであり,できるだけリスクを少なくして便益を上げる政策決定によって解決しなければならない。お前は経済成長の時期に就職できたからとか,お前は子どもの頃から恵まれた環境で育ってきた世代だからという理由で自己責任論を述べてしまうのは,許されざる行為である。
後藤和智 (2008). おまえが若者を語るな! 角川書店 p.214.
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