世間では,ホーディングがモノの欠乏への反応であるといわれるが,原因がそれだけでないことは明らかだ。これまで述べてきたように,たくさんのホーダーがごく普通の暮らしを送ってきたからだ。しかし,欠乏は必ずしも物質的なものとは限らず,感情的な欠乏もまたひどい結果を生む。感情的な欠乏とホーディングの関係を調べるために,私たちはホーダーのグループとOCD患者のグループ,そしてどちらの問題もない対照グループで,幼い頃の家庭環境への愛着や記憶の性質を比較した。ホーダーとOCD患者のグループはどちらも,人に対する愛着が対照グループよりも弱かった。彼らは「私はずっと他人に対して『相反する感情』を持っていました」とか「他の人が自分についてどう感じているのか,よくわからない」といった言い方をより頻繁にしていた。ホーダーとOCD患者の間には差がなかったが,人とのつながりの弱々しさは,ホーディングについての何かの問題というよりは,きわめて重い感情的な問題の結果なのではないだろうか。2つ目の,幼い頃の家族の記憶については,暖かく支え合う家族について語るホーダーの数は,他の2つのどちらのグループよりも少なかった。「子供の頃はいつも周りから支えてもらいました」とか「家族はいつも私を受け入れてくれました」といった言葉をホーダーから聞くことは,他のグループよりも少ないのである。彼らのホーディングはおそらく,周りから充分に支えられなかった子供時代に育まれたものだろう。
ランディ・O・フロスト ゲイル・スティケティー 春日井晶子(訳) (2012). ホーダー:捨てられない・片付けられない病 日経ナショナルジオグラフィック社 pp.121-122
(Frost, R. O. & Steketee, G. (2010). Stuff Boston: Houghton Mifflin Harcourt)
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