ホーダーの大半が無機物を集め溜めこむのに対し,動物に安心や愛着,そしてアイデンティティを感じる人も,少数ではあるが存在する。動物ホーディングの症例には劇的なものが多く,好意的に宣伝されることもある。動物ホーダーは自分が集める動物と強い愛着で結ばれる。多数の動物,とくに犬や猫を集める人は,自分の行動が動物を救う使命の一部であると考えることが多く,自分にはそれをする特別な力や能力があると考える。その一方で,動物たちの健康や劣悪な環境には気づかないことが多い。衛生局で担当者から聞いたところ,もっとも扱いに困るのは多数の動物が絡むホーディングの事例だとのことだった。問題解決に協力的なのは動物ホーダーの10パーセント以下で,動物もホーダーもひどい環境で暮らしていることがほとんどである。
どの住宅地にも「猫おばさん」が1人はいるが,この種のホーディングに対する理解はほとんどない。モノを集めるホーダーについての研究はこれまで10例以上行われたが,動物ホーダーについての研究はほとんどないのだ。存在するいくつかの研究でも,情報源は動物管理局や動物愛護協会の担当者,裁判所の記録,報道などであり,動物ホーダー自身による情報はきわめて稀である。その理由は簡単だ。ある動物ホーディングの事例が注目される頃には,ホーダーは近所の人々と大きなトラブルを抱えてしまっているからだ。画像や個人情報がニュースの合間に流され,ホーダーはその件について進んで話そうという気をなくしてしまう。
ランディ・O・フロスト ゲイル・スティケティー 春日井晶子(訳) (2012). ホーダー:捨てられない・片付けられない病 日経ナショナルジオグラフィック社 pp.154-155
(Frost, R. O. & Steketee, G. (2010). Stuff Boston: Houghton Mifflin Harcourt)
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