問題を広く定義することには利点があるので,社会問題は時がたつにつれて徐々に定義が広がり,前より広い範囲の現象に当てはまるようになりがちだ。このプロセスを「ドメイン・エクスパンション」(領域拡大)という。もともと児童虐待は,身体的な虐待と理解されていたが,時がたつにつれて定義が広がり,性的虐待,心理的虐待なども含まれるようになっている。同様にヘイトクライムについての議論では,初めのころは人種的,宗教的偏見に基づく攻撃が論じられていた。ところが,まもなく範囲は広がって,性的嗜好に基づく犯罪も含むようになり,この問題のアドボケートはさらに,ジェンダーや障害に対する偏見によって起こる犯罪などを加えるよう求めた。
ある問題の定義を広げれば,当然,その問題の規模についての統計的見積りも大きくなる。定義が広いほど,大きな数字を出すことができ,数字が大きいほど,大きな問題があることになり,人々が関心を寄せることがそれだけ求められることになる。
ジョエル・ベスト 林 大(訳) (2011). あやしい統計フィールドガイド 白楊社 pp.77-78
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