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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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依存症とは

 ところで依存症とは何か?心身に良くないとわかっているのに有害な行為を繰り返し行なってしまうことを指す。たいていは多くの,自分がそのつもりだった以上の時間を費やし,やめようと思ってもやめられず,社会的な活動や仕事を犠牲にして薬物を濫用し,やめると離脱症状に苦しむ。礼儀正しい社会ではこんな症状が病気であることに誰も疑義を呈さないが,わたしは正直なところ,依存症が病気かどうかわからないと思っている。依存症者の行動は明らかにインセンティブに影響されるが,嚢胞性線維症の症状にはインセンティブは影響しない。それに依存症と呼ばれるものは,X線検査や血液検査で判明する疾患というよりも,不健康な行動パターンに過ぎないのではないか。だとすれば,どうして依存症は病気なのだろう?
 一方で,多くの病気が社会的に作られていることも事実だ。病気であることを誰も疑わない問題でも,その多くはある種の行動パターンから生じている。肺がんの大きな原因は喫煙だし,喫煙者はそれをよく知っている。心臓病や糖尿病,肝硬変,高血圧,HIV,その他多くの病気の殆どは生活を改めれば予防できる場合がある。その点はドラッグやアルコール濫用と同じだが,これらは病気ではないとは誰も言わない。

ダニエル・アクスト 吉田利子(訳) (2011). なぜ意志の力はあてにならないのか:自己コントロールの文化史 NTT出版 pp.264-265
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