ジム・ジョーンズのような人物がおこなうマインドコントロールには,催眠術による昏睡状態や,暗示にかかりやすい人につけ込む行為は含まれていない。そこに働いているのは4つの原則だ。
1つは,段階的に少しずつ帰依の度合を深めていくこと。カルト教団のリーダーは相手に対して最初の1歩を踏み入れると,しだいに要求を強めていく。そしてふと気づくと,信徒はどっぷり教団にはまり込んでいる。2つ目は,グループから不協和音をすべて排除すること。懐疑的な者を排除し,グループはしだいに外界から孤立していく。そして3つ目は奇跡の力。カルト・リーダーは不可能を可能にするかのように見せかけることで,自分は神と直接つながっている,だから疑いをいだいてはならないと人々に思い込ませる。4つ目は,自己正当化である。人に奇妙な儀式や苦痛を伴う儀式を強いるグループは,敬遠されるはずだと思うかもしれない。だが実際には,その逆である。これらの儀式に参加した信徒は,自分の苦しみを正当化するために,このグループには価値があると前向きに捉えるのだ。
リチャード・ワイズマン 木村博江(訳) (2012). 超常現象の科学:なぜ人は幽霊が見えるのか 文藝春秋 pp.245-246
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